風邪などの感染症予防対策としてのうがいは基本的な手法として、一般的に定着しています。特に小児ではうがいが、しっかりできているのかという問題もあり、感染対策として本当に効果があるのか、疑問の余地もあります。日本における福岡市で行われた小児を対象にうがいに対する効果を検討した観察研究があります。おおむねうがいを実施した方が減少傾向にあります。ただ様々な交絡の影響やランダム化されていない点を加味して、その有効性は割り引いて考えるべきかも知れません。
[研究デザイン:コホート研究]
論文のPECO
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P:対象患者
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福岡市にある145保育所に在籍していた2~6歳までの小児19595人
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E:介入暴露
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少なくとも1日1回うがいを実施(15859人、平均4.48歳)
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C:比較対照
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うがいを実施しない(3736人、平均2.42歳)
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O:評価項目
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20日以内の病気による欠席率と昼間の発熱率
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(うがいによる発熱頻度への効果)
発熱発症
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調整オッズ比
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Gargling v.
non-gargling
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0.68(0.57–0.82)
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2歳 (n
= 3251; g = 742, ng = 2509)
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0.67(0.53–0.86)
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3歳 (n
= 3675; g = 2681, ng = 994)
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0.75(0.52–1.08)
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4歳 (n
= 4424; g = 4271, ng = 153)
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0.46(0.26–0.80)
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5歳 (n
= 4521; g = 4474, ng = 47)
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0.41(0.18–0.93)
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6歳 (n
= 3724; g = 3691, ng = 33)
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N/C
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※調整した交絡因子:うがい状態、性別、年齢、学校の所在地、学校の規模
(うがいによる学校欠席率への影響)
学校欠席
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調整オッズ比
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Gargling v.
non-gargling
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0.92(0.84–1.00)
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2歳 (n
= 3251; g = 742, ng = 2509)
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0.97(0.85–1.10)
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3歳 (n
= 3675; g = 2681, ng = 994)
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0.96(0.83–1.10)
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4歳 (n
= 4424; g = 4271, ng = 153)
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0.68(0.52–0.87)
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5歳 (n
= 4521; g = 4474, ng = 47)
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0.59(0.38–0.92)
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6歳 (n
= 3724; g = 3691, ng = 33)
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0.63(0.38–1.04)
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※調整した交絡因子:うがい状態、性別、年齢、学校の所在地、学校の規模
この論文では興味深いことにうがい液別での効果をうがいなしと比較して解析を加えています。サブ解析に相当しますのであくまで参考程度ですが以下にまとめます。
発熱発症
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調整オッズ比
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うがいなし
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1 Reference
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水道水
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0.70 (0.58‐0.85)
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食塩水
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0.50 (0.22‐1.12)
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緑茶
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0.32 (0.17‐0.61)
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機能水
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0.46 (0.24‐0.86)
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学校欠席への影響
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調整オッズ比
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うがいなし
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1 Reference
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水道水
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0.94 (0.86–1.04)
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食塩水
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1.12 (0.80–1.59)
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緑茶
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1.12 (0.90–1.40)
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機能水
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0.98 (0.77–1.25)
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※調整した交絡因子:うがい状態、性別、年齢、学校の所在地、学校の規模
学校欠席への影響は全体的にもあまり明確な差は出ていません。またうがい液の種類では意外なことにイメージとしてよさそうな食塩水では明確な効果は不明で、水道水、そして緑茶でオッズが有意に低下しています。介入の手間を考慮すれば水道水が一番現実的だと思いますが、健康志向な人へは緑茶も勧められるかもしれません。実際のところ、イソジン®に代表されるようなヨードうがい液と通常の水でうがいの効果に差が出るのでしょうか。
[研究デザイン:ランダム化比較試験]
論文のPECO
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P:対象患者
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18歳~65歳の健常者387人
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E:介入暴露1
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1日あたり少なくとも3回、水でうがいを60日間
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E:介入暴露2
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1日当たり少なくとも3回、ポビドンヨードうがい液を60日間
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C:比較対照
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通常ケア
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O:評価項目
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上気道感染初発
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結果
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Eうがい
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C通常ケア
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発生率比[95%信頼区間]
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上気道感染
初発
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E1:水
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0.17/人30日
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0.26/人30日
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0.64
[0.41-0.99]
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E2:ヨード
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0.24/人30日
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0.89
[0.60-1.33]
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統計解析はintention-to-treat。小児での研究ではありませんが、ヨード製剤を用いたうがいよりも水でのうがいの方が感染症予防効果が高い可能性を示唆しています。小児でもあえてヨード製剤をうがい液として用いる必要はないでしょう。
簡単な水でのうがいはコストベネフィットにも優れていると言えます。もちろんマスクや手洗いも効果が期待できる可能性がたいかいですから、できる限り組み合わせて行うべきでしょう。
[研究デザイン:メタ分析]
呼吸器系ウイルスの感染拡大を遮断あるいは減少させるための物理的介入の有効性に関するシステマテックレビューの論文です。観察研究を含む59研究を対象としています。ブロボグラムは以下の通り。
[結論]
うがいの励行は小児においても発熱性疾患を予防できる可能性があり、うがい液は通常の水で十分である。うがい薬をあえて使用するメリット少ない。感染対策としては可能な限り手洗いやマスク着用と組み合わせて行うべき。
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