平成26年度薬剤師のジャーナルクラブを以下の通り開催いたします。
開催日時:平成26年11月9日(日曜日)
■午後20時45分頃 仮配信
■午後21時00分頃 本配信
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■午後21時00分頃 本配信
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※ツイキャス配信はこちらから→http://twitcasting.tv/89089314
ご不明な点は薬剤師のジャーナルクラブフェイスブックページから、又は当ブログ「自己紹介」に掲載されているメールアドレスまで!
今回は@pharmasahiro先生にシナリオ作成を担当していただきました。ありがとうございました。
以下は、@pharmasahiro先生のブログからの引用です。
[症例14:アジスロマイシンの副作用はどれくらい?その2]
【仮想症例シナリオ】
あなたはとある病院に勤める薬剤師です.
こちらの病院では最近, 薬薬連携をもっと活発にしようという流れがあり, その一環として,
病院薬剤部と院外の保険薬局とで合同の勉強会を毎月開催しておりました.
あなたはとある病院に勤める薬剤師です.
こちらの病院では最近, 薬薬連携をもっと活発にしようという流れがあり, その一環として,
病院薬剤部と院外の保険薬局とで合同の勉強会を毎月開催しておりました.
次の勉強会での題材を考えて欲しいと上司から頼まれたのがあなた.
さて, どういった内容にしようか考えていると, 普段から交流のある薬局薬剤師の先生から次のような提案を受けました.
さて, どういった内容にしようか考えていると, 普段から交流のある薬局薬剤師の先生から次のような提案を受けました.
「そういえば, この前のJJCLIPの最後で取り扱った, アジスロマイシンの副作用についての論文をみんなで読んでみてはいかがでしょう?」
こちらの薬局薬剤師の先生は, 普段からJJCLIPを視聴している方で,
その方の影響もあって, 最近は自分もJJCLIPを聴くようになっていました.
その方の影響もあって, 最近は自分もJJCLIPを聴くようになっていました.
前回の放送で取り扱った論文では, 患者群が退役軍人であることや, 喫煙率の高さなど, 普段自分が目にする患者さん達とは背景が異なる点が多いため, あなたもほかの論文も参考にしたいなと考えていたところでした.
「前回放送で見つけたあの論文も気になっていたところだし, それに自分たちだけではなく, 論文を読める薬剤師が職場にもっと居てほしい. ここは思い切って, 職場の違いを超えて, 抄読会を兼ねた勉強会にしてみましょうか」
こうして, 保険薬局の先生と意気投合したあなたは, 早速共同で準備に取りかかることにしました.
[文献タイトルと出典]
Use of azithromycin and death from cardiovascular causes.
Pubmed : http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23635050
PDF → http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1300799
Use of azithromycin and death from cardiovascular causes.
Pubmed : http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23635050
PDF → http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1300799
※ワークシートはこちらを使います。
このブログでは前回も少し触れましたが傾向スコアについてまとめておきます。
[傾向スコアマッチングについて]
コホート研究のような非ランダム化比較研究で問題となるのが2群間の患者背景の偏りでした。すなわち交絡の影響です。このような影響を排除するために多変量解析を用いた交絡調整がなされるわけですが、患者背景の偏りを防ぐために近年、良く用いられる手法が傾向スコアを用いたマッチングです。前回のジャーナルクラブで取り上げた論文でも使用されていましたね。
Azithromycin
and levofloxacin use and increased risk of cardiac arrhythmia and death.
傾向スコアを用いた代表的な論文が以下のものです。
Aspirin
use and all-cause mortality among patients being evaluated for known or
suspected coronary artery disease: A propensity analysis. JAMA. 2001 Sep
12;286(10):1187-94. PMID:
11559263
この研究は冠動脈疾患の疑いのある患者に対してアスピリンを使うと死亡リスクが減るのかどうかを検討したProspective, nonrandomized, observational cohort studyです。観察研究ですから、当然研究開始時ではアスピリン使用群とアスピリン非使用群の患者背景は異なっています。アスピリンをすでに服用している人は基礎疾患が多く、その予後はアスピリンを飲んでいない人に比べて悪い、という事は容易に想像がつきますよね。論文本文のtable1を見ていただければお分かりの通り、年齢も、糖尿病既往歴も、高血圧患者も、冠動脈疾患患者もアスピリン使用群で有意に多いわけです。この偏りをどう防ぐか、傾向スコアが強力な武器となります。
傾向スコアとは一言で言えば、この研究の場合、参加者がアスピリンを使用している可能性(=傾向)を確率で示したものです。
研究参加者
|
患者背景
|
アスピリン使用可能性
(=傾向スコア)
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参加者A
|
80歳男性、高血圧、糖尿病あり、心臓病の既往あり
|
80%
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参加者B
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60歳女性、血圧正常。心疾患の既往なし。糖尿病なし。
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10%
|
性別や、年齢、併存疾患やその既往など数多くの交絡因子を傾向スコアという一つの変数に落とし込むことができるのです。そしてこの傾向スコアでマッチングを行うと患者背景を偏りなくそろえることが可能となります。この研究でのアスピリンの使用有無でまず2群に分けますが、その際に傾向スコアが同じ人でマッチングを行いながら2群に分けるのです。こうすることで様々な背景因子をきれいにそろえることができます。(疑似ランダム化)
アスピリン使用あり
|
80%
|
40%
|
:::::::
|
30%
|
アスピリン使用なし
|
80%
|
40%
|
:::::::
|
30%
|
この研究ではtable3にマッチング後の患者背景がまとめられています。たくさんの変数について、きれいに患者背景がそろっていることがご確認いただけるでしょう。
当然ながら、コホートの登録患者すべてをマッチングすることはできません。傾向スコアが極端に高い患者ではほぼ全例がアスピリンを使用しており、アスピリンを服用していない群の中から傾向スコアが極端に高い人が存在しない可能性が高いからです。同様に傾向スコアが極端に低い人の中でアスピリンを使用している人は稀でしょう。傾向スコアマッチングではこのような外れ値が除外されてしまうことがあり、算出される結果はコホート全体の平均的な値となり、effectはやや低くなるでしょう。外的妥当性に優れる観察研究ではありますが、このあたりでやや割り引いて考える必要があるかもしれません。
またマッチングできたとしても、傾向スコアが高い人、低い人はやはり人数が少なくなってしまい、サンプリングバイアスを生じることがあります。近年ではこのようなサンプリングバイアスを少しでも軽減するために傾向スコアに重みづけをして解析する手法も増えています。これは介入群の傾向スコアは逆数を用い、対照群の傾向スコアには1-傾向スコアの逆数を用いるもので、極端に傾向スコアが高い部分と低い部分の患者数の少なさを統計的に補正するというものです。
傾向スコアを用いることで観察研究でもランダム化比較試験と同じように比較可能性が高まりますが、極端な外れ値は除外されてしまうため、その外的妥当性についての問題があるようにも思います。対象母集団の基本的な特性と合わせてエビデンスの適用時には熟慮が必要な部分かと思います。
※薬剤師のジャーナルクラブ(Japanese Journal Club for Clinical Pharmacists:JJCLIP)は臨床医学論文と薬剤師の日常業務をつなぐための架け橋として、日本病院薬剤師会精神科薬物療法専門薬剤師の@89089314先生、臨床における薬局と薬剤師の在り方を模索する薬局薬剤師 @pharmasahiro先生、そしてわたくし@syuichiao中心としたEBMワークショップをSNS上でシミュレートした情報共有コミュニティーです。
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