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2012年12月19日水曜日

薬剤熱(Drug Fever)のアセスメント


【薬剤熱について】

薬剤熱は薬物により発熱をきたす症状です。皮膚に関する症状が無い薬物への発熱反応であるといいます。正確な作用機序は不明ですが、その頻度は入院患者の実に10%に発生すると推定されています。1)通常の発熱と異なり頻脈傾向はみられず、除脈傾向なことが多いそうです。また発熱の割に元気であることも多いといわれています。白血球数や炎症反応に関する臨床所見も上昇するため通常の感染症との鑑別が難しいこともしばしばだそうです。薬剤熱は薬剤熱と疑ってかからないとなかなか鑑別できません。 

【薬剤熱の作用機序】

明確な機序は不明ですが、一般的には以下の点が指摘されています。
■薬物誘発性抗体による免疫応答2)
■薬剤による抹消放熱抑制4)
■代謝の亢進4)
■内因性発熱物質の放出促進4)

【薬剤熱の経過】

薬剤熱は原因薬剤の投与後710日後に発症し、通常薬物中止後48時間以内に解熱するといわれています。2)3)4)半減期が長い薬物ではそれ以上になることもあります。投与中止後、再度原因薬剤を投与すると高確率で発熱が再発します。多くの場合薬剤中止で経過は良好ですが、入院期間や病院滞在日数は延長します。5)
 
【薬剤熱の原因薬剤】

薬剤の多くが原因となりえますが、一般的にその頻度が高いものとして、ペニシリン系抗菌薬やセファロスポリン、抗結核薬、キニジン、プロカインアミド、メチルドパ、フェニトイン等が挙げられています。4)抗菌薬は薬剤熱の主要な原因といわれていますが、具体的には以下の薬剤の報告が挙げられています。5)

■アミカシン,              ■オキサシリン    ■セフォタキシム
■セフトリアキソン.      ■リファンピシン   ■バンコマイシン
■シプロフロキサシン  ■イソニアジド     ■クロトリマゾール

その他サイアザイド系やループ等の利尿薬も原因薬剤として頻度が高いといわれています。また作用機所から薬剤性高体温を起こしやすい主な薬物は以下のとおりです。

■抗コリン薬:抹消放熱抑制
■甲状腺ホルモン薬、サリチル酸:代謝亢進
■フェノチアジン系薬剤:体温中枢障害

【まとめ】

薬剤熱は、それに気づかないことで、本来不要な治療や投薬をしたり、入院期間や患者負担は増大します。実際に発熱した患者を目の前に、感染症を疑い、抗菌薬を投与したものの解熱せず、抗菌薬を変更するケースもあると思いますが、患者の状態を良く観察しながら、この薬剤熱というものを意識することで、不明熱の原因が見えてくるかもしれません。薬剤師としては薬剤誘発性の発熱というものを薬の副作用アセスメントとして常に頭の片隅に置いておく必要があると感じます。


[引用文献]
1)Drug fever. Infect Dis Clin North Am. 1996 Mar;10(1):85-91.
2)Drug fever.JAMA. 1981 Feb 27;245(8):851-4.
3)Drug fever Pharmacotherapy. 2010 Jan;30(1):57-69 
4)Drug-induced fever.Drug Intell Clin Pharm. 1986 Jun;20(6):413-20.
5) Drug Fever: a descriptive cohort study from the French national pharmacovigilance database
 Drug Saf. 2012 Sep 1;35(9):759-67.

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