[お知らせ]


2012年7月2日月曜日

2型糖尿病におけるHbA1cの考え方。

HbA1c、いわゆる糖化ヘモグロビンのことですが、
これは過去2ヶ月間の平均血糖値を反映しているといわれています。
ヘモグロビンが存在する赤血球の寿命の4ヶ月と関連しているためである、
といわれています。
直近の食事の影響が少ない為、HbA1cは糖尿病の臨床検査値として汎用されていいます。
そのため薬局外来では毎月ではないにしても、
患者さんから見せてもらえる機会もあると思います。

毎月の推移を見る事は患者さんの血糖コントロールを把握する上でも重要です。
何より生活習慣管理が重要な2型糖尿病では、
その指標としてこの数値から患者さんの生活習慣をおおよそ推測することが出来ます。
しかしながらその推移の見方には若干の注意が必要です。
特に毎月の推移を見るときは注意を要します。

例えば、毎月のHbA1c7%→7%→6.5%→6.4%で推移したとすると、
6.5%になった月は6.0%ということです。そう、ここで気付くべきは、
数値としては6,5%ですが、2ヶ月平均値でこの数字を達成する為には、
(7.06.0)÷26.5
というように、6.0%まで落とさなくてはいけません。患者さんは相当努力しています。
そして、6.4%の月は実は6.8%に上がったということがお分かりいただけるでしょうか。
HbA1cは毎月のデータであれば必ず推移をアセスメントしなくてはいけません。
6,4%に下がっているわけではなく、その月は
6.06.8)÷26.4
からわかるように6.8%に上昇しているのです。
このようにHbA1cは毎月の推移を評価する場合2ヶ月の平均値から
月単位の数値で評価しなくてはいけません。

ところでHbA1cとは、あらためて何でしょうか。
先程も説明したように過去2ヶ月間の平均血糖値ということですが、
要するにもう一度強調しますがただの平均血糖値なのです。換算式もあります。
平均血糖値AGmg/dL28.8×HbA1c46.7  Diabetes care 2008;31:1473 
そしてもう一度、ここで注目していただきたいのは
HbA1cは平均血糖値しか反映していないにすぎない
ということです。しつこいですね。何が言いたいかというと、
血糖変動と夜間低血糖や食後過血糖などの臨床症状は考慮されていない
ということです。

血糖コントロールも様々ですが、
同じHbA1cでも血糖値変動が激しいというのは良いアウトカムを生まないといわれています。
夜間低血糖が多いと認知症リスクが上昇したりJAMA.2009;301(15):1565.
食後血糖の変動幅は酸化ストレスマーカー尿中8–Iso-PGF2αの排泄量と相関するという
報告もあります。JAMA 2006; 295: 1681
これは動脈硬化が起こりやすいということを示唆します。
ラットやマウスでは高血糖が持続する場合よりも
特に血糖変動が動脈硬化を有意に促進することが分かってきました。
Arterioscler Thromb Vasc Biol 2006;26:2275-80

「良質な血糖コントロール=変動幅の少ない血糖コントロール」が有用だといわれているのは
このような背景からです。
良質な血糖コントロールはHbA1cではわからないということがポイントなのですが、
ではこのような血糖値コントロール状態を把握する方法は無いのでしょうか。
持続血糖モニタリングCGM Continuous Glucose Monitoring)という方法があります。
しかしながら、外来患者で調剤薬局薬剤師がこれを把握することはまず難しいでしょう。

さて、このように良質な血糖コントロールは体によさそうなイメージですが、
果たして本当に2型糖尿病の合併症を抑制し、
死亡リスク低下など良いアウトカムを生むのでしょうか?
ACOORD試験N Engl J Med 2008;358:2545に代表されるような
大規模介入試験において、厳格な血糖コントロールが良いアウトカムを生まないのは
血糖変動の正常化ではなく主にHbA1cの低下を目的としているからだとも言われています。

食後血糖値の管理に関する ガイドライン
においても「食後高血糖は有害で,対策を講じる必要がある。」とされています。

しかしながら薬物治療では血糖変動をスタビライズするといわれているαGiやグリニドには、
現時点で真のアウトカムを評価した明確なエビデンスはありません。
したがって血糖変動正常化アプローチに関してはまだまだエビデンスが不足してるのが現状です。

0 件のコメント:

コメントを投稿