[お知らせ]


2012年9月13日木曜日

NSAIDsの長期服用と心血管リスク


COX2選択的阻害薬はその心血管系リスクが話題となりました。
http://www.nihs.go.jp/dig/sireport/weekly2/19041014.pdf
rofecoxibはそのリスクゆえ製品の回収及び臨床試験の中止措置を行いました。
セレコキシブの添付文書には「警告」に以下の記載があります。
「外国において、シクロオキシゲナーゼ(COX-2選択的阻害剤等の投与により、心筋梗塞、脳卒中等の重篤で場合によっては致命的な心血管系血栓塞栓性事象のリスクを増大させる可能性があり、これらのリスクは使用期間とともに増大する可能性があると報告されている」

COX2選択的阻害薬は従来のNSAIDsと比べて心血管系リスクはどうなのでしょうか。
Rofecoxibとなプロキセンを比較したエビデンスを確認してみます。
Comparison of upper gastrointestinal toxicity of rofecoxib and naproxen in patients with rheumatoid arthritis. VIGOR Study Group.
N Engl J Med. 2000 Nov 23;343(21):1520-8, 2 p following 1528.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11087881

P50 歳以上またはグルココルチコイドの長期療法を受けている
  40 歳以上の慢性関節リウマチ患者 8,076
E:ロフェコキシブ 50 mg 1 1 回連日投与
C:ナプロキセン 500 mg 1 2 回連日投与
O:上部消化管の臨床的有害事象(胃十二指腸穿孔または閉塞,
  上部消化管出血,および症状性の胃十二指腸潰瘍)
(ランダム化比較試験 追跡期間9カ月)
慢性関節リウマチに対する有効性は同程度
消化管イベント:ロフェコキシブ 2.1/100人年 ナプロキセン 4.5/100人年
relative risk, 0.5; 95%CI, 0.3 to 0.6; P<0.001とロフェコキシブが圧倒的に少ない。
一方で心筋梗塞発症リスクはナプロキセン0.1% ロフェコキシブ0.2%
relative risk, 0.2; 95%CI  0.1 to 0.7
ナプロキセンに比べてロフェコキシブでは心筋梗塞のリスクが5倍多いという結果です。

さらにCOX2阻害薬と従来NSAIDsの心血管リスクを比較したメタ分析
Do selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors and traditional non-steroidal
anti-inflammatory drugs increase the risk of atherothrombosis? Meta-analysis of
randomised trials
BMJ. 2006 Jun 3;332(7553):1302-8.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=16740558では
COX2阻害薬はプラセボ比較で血管イベントを増やすという結果でした。
rate ratio 1.42, 95% CI1.13 to 1.78; P = 0.003
しかしながら従来のNSAIDSとそのリスクは同等という結論です。
RR 1.16, 0.97 to 1.38; P = 0.1
ただNSAIDsそのものが心血管リスクに関連していることは軽視できない事実の可能性が高く軽視できない問題だと思います。観察研究ではあるもののNSAIDsの長期間服用と心血管イベントに関する報告がCIRCULATIONに掲載されました。

Long-Term Cardiovascular Risk of NSAID Use According to Time Passed After First-Time Myocardial Infarction: A Nationwide Cohort Study
CIRCULATIONAHA.112.112607 Published online before print September 10, 2012, doi: 10.1161/
http://circ.ahajournals.org/content/early/2012/09/07/CIRCULATIONAHA.112.112607.abstract

NSAIDsの服用と初発の心筋梗塞の関係を検証したコホート研究です。平均年齢68.9歳の99,187人(男性の割合63.6%)を対象にNSAIDsの1から5年間の服用と冠動脈疾患死亡および心筋梗塞の発生リスクを検討しています。
5年のフォローアップ中の全死亡は36,747 人、冠動脈疾患死・非致死的心筋梗塞は28,693人 。

NSAIDsの服用は非服用者に比べて
服用1年での死亡: HR 1.59 (95% CI 1.49-1.69
服用5年超での死亡: HR 1.63 (95%CI 1.52-1.74)
服用1年での冠動脈疾患死・非致死的心筋梗塞
:::::::

HR 1.30 (95%CI 1.22-1.39
服用5年超での冠動脈疾患死・非致死的心筋梗塞
HR 1.41 (95%CI 1.28-1.55)

観察研究でありNSAIDsを長期服用せねばならない状況と死亡リスクというものを
考慮せねばいけませんが、真のアウトカムを評価しておりなかなか衝撃的な報告です。
ちなみに薬剤別ですとジクロフェナクの2年服用の死亡リスクが最も高く
2.7395%CI 2.343.19)という結果です。

慢性疼痛のコントロールにおいてNSAIDsよりもアセトアミノフェンやオピオイドの臨床的位置づけを明確にするべきではなどと考えてしまいます。
さらに近年医療用からスイッチされたロキソプロフェンが一般用医薬品として販売されており、入手も容易になっていますが、このような観点から疾患禁忌はもちろんのこと、基礎疾患に対する治療が行われているのか、併用薬は何か、合併症は無いか等を確認したうえでハイリスク患者には販売しないことも考慮に入れなければと思います。状況によっては他の治療選択肢に関する情報提供も有用かもしれません。(参考)慢性疼痛における鍼治療の効果

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