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2012年11月9日金曜日

2型糖尿病における経口糖尿病薬メトホルミンの効果。


2型糖尿病における経口糖尿病薬にはSU剤、ピオグリタゾン、αグルコシダーゼ阻害薬、そして最近はやりのDPP4阻害薬などありますが、2型糖尿病の真のアウトカム改善エビデンスを有する薬剤は現時点で非常に少ないといわざるをえません。唯一メトホルミンによる早期介入が2型糖尿病による大血管症を抑制できる可能性が示唆されています。そんなメトホルミンですがAnn int medよりSU剤と比較して心血管イベントをアウトカムに置いたコホート研究が報告されています。

 Comparative Effectiveness of Sulfonylurea and Metformin Monotherapy on Cardiovascular Events in Type 2 Diabetes Mellitus: A Cohort Study
Ann Intern Med. 6 November 2012;157(9):601-610
http://annals.org/article.aspx?articleid=1389845

まずは論文のPECOから確認します。
P:メディケアデータからの18歳以上の2型糖尿病患者253690例を対象に
E:SU剤の投与(98665例)は
C:メトホルミンの投与(155025例)と比べて
O:複合心血管イベント(急性心筋梗塞または脳卒中による入院または死亡)はどうなるか?
試験デザインは後ろ向きコホート研究Retrospective cohort study.

 なお対象患者を捕捉すると少なくとも1年以上の薬物治療を行っていない状態で新規に処方を受けた患者が対象であり、さらにリスクに影響を与えるとして、ベースラインにおいて、コカインの使用、または133のベースライン血清クレアチニン値133μmol/ L1.5 mg / dL以上)以上、重篤な病状(心不全・非黒色腫皮膚がんを除く癌、臓器移植、末期腎不全、肝疾患、呼吸不全)の患者は除外されている。
  またアウトカムは人口統計学的特性、薬物治療、コレステロール値、ヘモグロビンA1c、血清クレアチニン値、血圧、BMI、医療の利用状況、および合併症で調整しています。
介入においてはロシグリタゾンやピオグリタゾンの様なチアゾリジン系薬剤やメトホルミンSU剤の併用は除外されています。チアゾリジンは心血管系への影響を無視できないのでこのあたりは当然といえば当然。使用しているSU剤はグリベンクラミド55%とglipizide45%です。
追跡期間は初回処方日から、処方変更、又は他の経口糖尿病薬が追加されたり90日間の薬物治療停止やアウトカムの初回発生までの期間との記載があるが、複合心血管アウトカムが発生するのに十分な期間のかは不明です。メトホルミン群で中央値0.78年、SU剤群で中央値0.61年との記載があります。
統計解析はCox比例ハザードモデルを使用して多変量解析による調整を行っています。さらに患者背景はpropensity scoreマッチングを行い、2群間でほぼ同等です。

プライマリ結果は以下の通りです。
SU剤:発生頻度18.2/1000人年
■メトホルミン:10.4/1000人年
■調整HR [aHR], 1.21 [95CI, 1.13 to 1.30]
サブ解析においてSU剤別では
■グリベンクラミド (aHR, 1.26 [CI, 1.16 to 1.37])
glipizide      (aHR, 1.15 [CI, 1.06 to 1.26])

糖尿病の初期治療のためにメトホルミンと比べてSU剤の使用は、CVDイベントや死亡の危険性1.21倍増加という結論です。
  交絡因子の調整は問題なさそうですが、入院というアウトカムの客観性や追跡期間に関してはその妥当性が怪しいところがあります。メトホルミンは古くからある薬剤であり、今となっては倫理的にも2型糖尿病患者を対象としたプラセボ対照2重盲検ランダム化比較試験の実施は困難になっているのでしょう。ただ、数少ない心血管イベントを減らせる可能性がある薬剤だけにその効果をぜひ介入試験で検証してほしいところです。

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