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2013年2月15日金曜日

Red Bull®(レッドブル)は翼を授けますか?

(※注意)以下の内容は、Red Bull®(レッドブル)に関する論文を紹介するものであり、特定の商品を宣伝したり批判するようなものではありません。またRed Bull®そのものの摂取を推奨するものでもありません。

Red Bull®は本邦では炭酸飲料として発売されており、「レッドブル翼を授ける」のテレビコマーシャルでもおなじみです。この商品はオーストリアのRed Bull GmbHが販売する清涼飲料水で世界160か国以上で販売されてると言います。本邦で販売されているのは「タウリン」を含まないものでいわゆる栄養ドリンク剤とは異なります。本邦で発売されているRed Bull®の成分(100mlあたり)は以下の通りです。

■エネルギー45Kcal ■タンパク質0g ■脂質0
■炭水化物11g        ■糖質11g       ■ナトリウム0.04
これらの栄養成分に加え、アルギニン、カフェイン、ビタミンB群(ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB2、ビタミンB12)を含有しています。

Red Bull®のホームページによれば「いつ飲めば良いか」という質問に高速道路運転時を推奨しています。実際に高速道路運転時にそのドライビングパフォーマンスにどの程度影響があるのでしょうか。面白い論文がありました。

Positive effects of Red Bull® Energy Drink on driving performance during prolonged driving
この研究は健常な24人のボランティア(男性12名、女性12名)を対象としてレッドブルの効果を運転シュミレーターを用いた高速道路の長時間ドライビングのパフォーマンスへの影響についてランダム化比較試験で検討しています。論文のPECOをまとめると以下の通りです。(表1
(表1)論文のPECO

Paitient(どんな患者に)


21歳から35歳の健常ボランティア24名(男性12名女性12名)歳。運転免許取得から少なくとも3年以上で年間5000㎞以上運転走行を行っている人


Exposure(何をすると)


2時間運転後、レッドブルの服用+休憩して2時間運転


Comparison ①(何と比べて)


2時間運転後、プラセボの服用+休憩して2時間運転


Comparison ②(何と比べて)


休憩なしの4時間連続運転走行


Outcome(どうなるか)


高速道路走行時のSDLP(走行中の車線ずれの標準偏差)


疑問のタイプ


治療に関する疑問






















ベースラインの患者背景はコンディションにおいて差がないとしています。試験デザインはクロスオーバーの2重盲検ランダム化比較試験でSTISIM Drive TMという運転シュミレーターを用いて、2時間運転をして15分休憩をし、レッドブル、プラセボをそれぞれ割り当てられた群で服用し、さらに2時間運転を継続するというものです。休憩なしの群もあり、3群で比較検討しています。

3例が除外されており、解析されたのは21例です。追跡率は87.5%です。症例数が少ないだけに結果に影響するかどうか微妙なところでしょうか。

この試験で使用されたレッドブル250ml中の成分は、砂糖21g ブドウ糖5g タウリン1000mg カフィイン80mg グルクロノラクトン60mg イノシトール50mg、ビタミンB群が含まれており、本邦で市販されているレッドブルとは少し成分が異なります。(本邦で販売されてるものには、タウリンは含有されていません)プラセボに使用されたものはタウリン、カフェイン、グルクロノラクトン、イノシトール、ビタミンB群が含有されていないものです。レッドブルとプラセボのサンプルは販売元であるRed Bull GmbHが供給しています。ドリンクは5分以内に飲みきることとしています。

運転シュミレーターのSTISIM Drive TMは、座席からダッシュボード、計器類、クラッチ、ブレーキ等運転操作に必要なもの、スクリーン(2.10×1.58m)などから構成されている、車全体的なユニットだそうです。

プライマリアウトカムのSDLP:standard deviation of lateral positionというのは直訳する横方向位置の標準偏差ということですが、いまいちピンときません。(図1)を見ていただけると想像できると思いますが、運転時の集中力低下から起こる、車線ずれの標準偏差ということのようです。



                           (図1)SDLP

結果は休憩をとる前の2時間において3で有意な差はありませんが、休憩後3時間時点(P0.046)と4時間時点(P0.011)でプラセボに比べて、レッドブル群で有意なスコア改善が見られています。もちろん休憩なしとレッドブル群もレッツドブル群で有意にスコアが改善しています。(図2)プラセボと休憩なしでは有意な差はつきませんでした。


                        (図2)高速道路走行時のSDLP(走行中の車線ずれの標準偏差)


プライマリアウトカムではありませんが、眠気のスコアや運転の質もレッドブル群で有意に改善したとしています。(図3


                                              (図3)眠気に関するスコア

運転シュミレーターでの結果で実用性が本当にあるのか、という問題やプライマリアウトカムの設定SDLPがいまいちな気がしますが、栄養ドリンク的な飲料水でドライビングパフォーマンスを改善できる可能性が示唆された興味深い報告でした。ちなみにカフェイン入りのコーヒーとノンカフェインコーヒーを比較したまったく同じような試験
Effects of coffee on driving performance during prolonged simulated highway driving
でもカフェイン含有のコーヒーでSDLPが有意に改善していることから、レッドブルの成分というよりはカフェインによる効果かもしれません。
 
 
栄養ドリンクがカフェイン以外の活性成分を含んでいるかという以下のレビューによれば
Do energy drinks contain active components other than caffeine?
Nutr Rev. 2012 Dec;70(12):730-44. PMID:23206286
栄養ドリンクにはタウリンやガラナエキス、朝鮮人参、グルクロノラクトン、ビタミンB群、等が含まれているもののグルコースとガラナエキスに関する質の低いエビデンスの例外を除いて、カフェイン以外の成分が物理的、認知的パフォーマンス向上に寄与する根拠はまったく不足しているとしています。したがって日本で発売されているレッドブルはこの研究で使用されたものと異なりタウリンが含有されていませんが、その効果はカフェインによる影響が大きいと考えられ、日本で入手できるレッドブルでも同様の効果が期待できるかもしれません。

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