患者の渡航歴から、意外な感染症が疑われるかもしれません。本邦ではなくアメリカでの報告ですが、近年アメリカの風土病であるコクシジオイデス症が増加しているそうです。少し聞きなれない感染症ですし、コクシジオイデスについて勉強してみました。
[コクシジオイデス症とはなんだろうか]
報告の紹介の前にコクシジオイデス症に関して国立感染症研究所の感染症情報センターの記事を参考にしながらまとめてみます。
コクシジオイデス症とは米国西南部(カリフォルニア、アリゾナ、テキサス、ネバダ、ユタの諸州)、メキシコ西部、アルゼンチンのパンパ地域、ベネズエラのファルコン州の半乾燥地域の風土病で、渓谷熱(valley fever)、砂漠リューマチ(desert rheumatism)あるいは砂漠熱(desert fever)とも呼ばれています。
米国西南部の半乾燥地の土壌に生息する真菌の一種であるCoccidioides immitis(コクシジオイデス・イミチス)が強風などで空中に舞い上がりこれらを吸入すると肺に侵入し感染症を起こすといわれています。毎年多数発生する患者の約0.5%は全身感染に波及し、その半数が致死的となるそうです。本邦では2002年9月までに31例が報告されているそうで、その多くがカリフォルニア州やアリゾナ州への海外渡航歴を有する人たちでありましたが、2例は渡航歴のない綿花を扱う工場の従業員で、輸入された綿花に付着した原因菌を吸入したことにより感染したと考えられています。したがって本邦でも絶対に発生しない感染症ではありません。本邦ではコクシジオイデス症は感染症法において4類感染症に定められていて、診断した医師は直ちに最寄りの保健所に届け出ることが義務づけられています。
臨床症状は以下の4つに分類されています。
■原発性肺コクシジオイデス症 primary pulmonary
coccidioidomycosis
ほとんど無症状ですが、約40%において、軽いカゼに似た症状を示すとされています。汚染地域の住民のほとんどが短期間のうちに自然軽快します。約10%の患者の下腿に紅斑を伴う結節(結節性紅斑 erythema nodosum )が見られることが特徴で、これは女性に多いといわれています。
■原発性皮膚コクシジオイデス症 primary cutaneous coccidioidomysosis
極く稀に皮膚に初発病巣が生じることがあります。これは刺傷あるいは外傷にからコクシジオイデスに感染し発症することで乗じます。潰瘍を形成し、花キャベツ状の腫瘤を形成します。
■良性残留性コクシジオイデス症 benign residual coccidioidomycosis
症状がみられた原発性コクシジオイデス症の2~8%の患者の肺に、結核に似た空洞が形成されることがあります。炎症反応はほとんどなく、病巣はそれ以上進行せず、感染の恐れもないといわれています。自覚症状はほとんどなく、X 線撮影によってのみ見いだされます。コクシジオイドーマ(コクシジオイデス腫coccidioidoma )ともよばれます。
■播種性コクシジオイデス症 disseminated coccidioidomycosis
コクシジオイデス肉芽腫coccidioidal granuloma や進行性あるいは2次性コクシジオイデス症progressive or secondary coccidioidomycosis ともよばれ。肺の初感染病巣が進行し、血行性に全身に散布された状態です。原発性肺コクシジオイデス症の患者の約0.5%に発生し、そのうち約半数が死の転帰をとるといわれています。免疫不全の患者に起こることが多いく、皮膚、皮下組織、骨、関節、肝、腎、およびリンパ組織が侵されます。急性の場合、髄膜炎(coccidioidal meningitis)を併発することが多くみられます。現在治療は困難とされています。
ほとんど無症状ですが、約40%において、軽いカゼに似た症状を示すとされています。汚染地域の住民のほとんどが短期間のうちに自然軽快します。約10%の患者の下腿に紅斑を伴う結節(結節性紅斑 erythema nodosum )が見られることが特徴で、これは女性に多いといわれています。
■原発性皮膚コクシジオイデス症 primary cutaneous coccidioidomysosis
極く稀に皮膚に初発病巣が生じることがあります。これは刺傷あるいは外傷にからコクシジオイデスに感染し発症することで乗じます。潰瘍を形成し、花キャベツ状の腫瘤を形成します。
■良性残留性コクシジオイデス症 benign residual coccidioidomycosis
症状がみられた原発性コクシジオイデス症の2~8%の患者の肺に、結核に似た空洞が形成されることがあります。炎症反応はほとんどなく、病巣はそれ以上進行せず、感染の恐れもないといわれています。自覚症状はほとんどなく、X 線撮影によってのみ見いだされます。コクシジオイドーマ(コクシジオイデス腫coccidioidoma )ともよばれます。
■播種性コクシジオイデス症 disseminated coccidioidomycosis
コクシジオイデス肉芽腫coccidioidal granuloma や進行性あるいは2次性コクシジオイデス症progressive or secondary coccidioidomycosis ともよばれ。肺の初感染病巣が進行し、血行性に全身に散布された状態です。原発性肺コクシジオイデス症の患者の約0.5%に発生し、そのうち約半数が死の転帰をとるといわれています。免疫不全の患者に起こることが多いく、皮膚、皮下組織、骨、関節、肝、腎、およびリンパ組織が侵されます。急性の場合、髄膜炎(coccidioidal meningitis)を併発することが多くみられます。現在治療は困難とされています。
[コクシジオイデスは近年、アメリカで急増している…]
コクシジオイデスに関する報告がアメリカ疾病管理予防センター(CDC)の週報MMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report)に掲載されています。
Increase in Reported
Coccidioidomycosis — United States, 1998–2011
これによれば1998年から2011年の間に流行しての各州で報告されたコクシジオイデス症の発生率が統計的に有意な増加を示しているとしています。
詳しく見ていくとアリゾナ州では2007年から2008年にかけてカルホルニア州では2007年から2009年にかけて減少していたものの2010年から2011年にかけて劇的に増加したそうです。
この増加の理由は不明ですが、コクシジオイデスは、土壌中に存在しており、環境の変化に敏感で、干ばつや降雨量、温度などの要因が胞子飛散の増加をもたらしているか、あるいは建設開発などの人間の活動による土壌の破壊、などが要因となっているのではないかとしています。
またサーベイランスの方法が人為的に報告の増加につながった可能性も指摘しています。カルホルニア州では2011年の増加の原因の可能性として報告方法が2010年に変更されたことも触れています。ただこれだけではこの劇的増加は説明できないとしています。
コクシジオイデス症は、コクシジオイデス属の真菌の胞子を吸入することで発症する感染症。これは、アリゾナ州とカリフォルニア州で発生した例が最も多い、米国南西部の風土病であり、特に高齢者の間で、これらの分野での実質的な公衆衛生上の負担となっている。
コクシジオイデス症は近年劇的に増加している。年齢調整罹患率は、1998年では流行地域で人口10万人あたり5.3例であったが。2011年には10万人あたり42.6まで上昇した。流行地域において60歳から79歳の人の発生率は、2011年では10万人あたり69.1例までに上る。
コクシジオイデス症の報告例が増えており医療従事者は、流行地域に住んでいる、または流行地域に旅行してきた人でインフルエンザ様疾患を有する者に関しては、この感染症を警戒すべきである。コクシジオイデス症の罹患率を減少させるための戦略に関するさらなる研究が必要である。
[感染症が疑われる患者の渡航歴確認は貴重な情報です]
本邦でもこの風土病がよく見られる米国西南部へ渡航した患者が帰国後にインフルエンザ様症状を起こしているようならば、コクシジオイデス症を警戒する必要があるかもしれません。潜伏期は2週から4週間といわれていますが、それ以上の場合もあり、帰国後の発症も十分に考えられます。特に感染症が疑われる患者さんの渡航歴の確認というのは重要な情報ですね。
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