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2013年4月10日水曜日

肝斑に効く飲み薬は効果がありますか?


[肝斑と、その治療選択肢]
肝斑とは両ほほの骨にそって現れる左右対称性のしみのようなものです。30代から40代の女性に多く発症し、高齢者ではその発症頻度は低いようです。その原因として遺伝的影響、紫外線、妊娠、ホルモン療法、化粧品、光毒性を有する薬剤、抗けいれん薬への曝露などが挙げられています。[1
肝斑の治療には、局所のハイドロキノンやトレチノイン、フルオシノロンアセトニド、アゼライン酸(本邦では認可されていない薬剤で海外ではニキビなどの治療に使用されているようです)やその組み合わせなどが使用されるようです。[2][3]いずれも本邦では保険適応外となり自費診療です。
肝斑というキーワードでグーグル検索すると様々な情報にあふれていますが、その妥当性も怪しいものが多く正確な情報が分かりずらい現状です。美白に効果に関してWEB上で桑抽出エキスの抗酸化作用が良いなんて情報もありました。どうなんでしょう。これ本当なんでしょうか。いつも通りPubMedで調べてみるとこんな論文がありました[4

[桑抽出エキスが肝斑に効果があるか?]
Alvin G, et al.A comparative study of the safety and efficacy of 75% mulberry (Morus alba) extract oil versus placebo as a topical treatment for melasma: a randomized, single-blind, placebo-controlled trial J Drugs Dermatol. 2011 Sep;10(9):1025-31.

論文のPECOTはだいたい以下のような感じです。
P:50人の肝斑患者
E:75%桑抽出エキスオイル25
C:プラセボ25
OMASIスコア(肝斑面積と重症度スコアMelasQOLスコア(生活の質に関するスコア)
T:治療に関する疑問
試験デザインは単盲検ランダム化比較試験で追跡期間は8週です。ベースラインから8週後のMASIスコアは
■桑エキス:4.0762.884
■プラセボ:大きな改善は見られなかった。
またベースラインから8週後のMelasQOLスコアは
■桑エキスで58.8444.16
■プラセボで57.4454.28
この結果のみではこの数値が統計的に有意かどうか詳細な記載がないのでよくわかりませんが、桑抽出エキスがMASIスコアやQOLを改善する傾向にあるようです。桑の根皮由来の「ソウハクヒ」という生薬はフラボノイドを含み、抗酸化作用があるといわれていますが、その臨床応用にはまだまだ程遠い感じです。ちなみにソウハクヒは医療用でも使用される漢方薬の「五虎湯」や「清肺湯」などの構成生薬です。

[肝斑に対する効能を謳ったOTC医薬品があります]
本邦では肝斑へ効能を謳ったOTC医薬品があります。この薬剤主成分はトラネキサム酸で、医療用のトラネキサム酸製剤では肝斑への保険上の適応はありません。日常的によく処方される薬剤で、上気道炎におけるのどの痛みや、口内炎などの薬剤にも配合されているポピュラーな成分です。経口トラネキサム酸がはたして肝斑に有効なのか比較的最近の症例報告を見てみます。[5

Wu S,et al Treatment of melasma with oral administration of tranexamic acid. Aesthetic Plast Surg. 2012 Aug;36(4):964-70.

P:中国人女性74
E:トラネキサム酸250mgを12回を6か月投与
C:ベースラインとの比較
O:2名の医師が独立して肝斑サイズ、色素沈着など4段階で評価

6か月後の評価は以下の通りです。
■とても良い:8/74人(10.8%)
■良い    :40/74人(54%)
■ふつう   :23/74人(31.1%)
■悪い    :3/74人 4.1

トラネキサム酸の経口投与は、肝斑の治療のための有効かつ安全な治療であると結論してますが、これはランダム化比較試験ではありませんので、治療の効果を見るには妥当性に欠ける印象です。少なくともこれだけで有効とは判断できず、結果の数字はこれ以上でもこれ以下でもない印象です。PubMedで検索を続けてもトラネキサム酸内服薬の肝斑に対する有効性に関する文献を見つけることができませんでした。
肝斑治療におけるトラネキサム酸製剤は本邦では内服薬のみですが、5%トラネキサム酸外用剤を用いた2重盲検ランダム化比較試験の報告があります。[6

Kanechorn Na Ayuthaya P,et al Topical 5% tranexamic acid for the treatment of melasma in Asians: a double-blind randomized controlled clinical trial. J Cosmet Laser Ther. 2012 Jun;14(3):150-4

P:表皮肝斑を有する女性23
E5%トラネキサム酸
C:外用基材
O:肝斑面積と重症度指数(MASI
試験デザインは2重盲検査ランダム化比較試験です。
結果は両群ともにMASIが減少し有意な差は出なかったようで、局所トラネキサム酸を使用した群では紅班が出現してしまったようです。

[肝斑にトラネキサム酸、その有効性は…]
トラネキサム酸の肝斑に対する妥当性の高いエビデンスは以外にも少ないですが、有効性を示唆した報告は多数あります。ただその改善効果は妥当性も含めて明確なものとは言い難く、市販薬のコストを考えると、悩ましい部分もあります。紫外線対策など総合的な対策が必要かもしれません。

[引用文献]
[1] Arch Dermatol. 1995 Dec;131(12):1453-7. PMID:7492140
[2] J Am Acad Dermatol. 2006 Dec;55(6):1048-65. PMID:17097400
[3] Cochrane Database Syst Rev. 2010 Jul 7;(7):CD003583. PMID:20614435
[4] J Drugs Dermatol. 2011 Sep;10(9):1025-31. PMID:22052272
[5] Aesthetic Plast Surg. 2012 Aug;36(4):964-70PMID:22552446
[6] J Cosmet Laser Ther. 2012 Jun;14(3):150-4PMID22506692

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